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欲を言えば、他の捜査官が監視しているテロリストを見付け出し、起爆させる合図を断ってしまうのが望ましい。そうすれば心置きなく撤去できるが、ジェニファーがバレないのと同様に、相手も気付かれるようなヘマはしないだろう。
テロリストが要求した期限もある。ただ手をこまねいて、待っているだけというのも考えられない。
「……ねぇ」
であるなら、多少の危険を冒してでも行動に移すべきだ。さも一般人を装って青ガエルに近づき、テロリスト達の死角をついて。
「ねえってば」
「ん――ふぁ!? ジェニ」
「じぇに?」
いつの間にか、目の前には妄想していたはずの彼女がいた。思っていたよりも、ずっと声が若い。片眉を上げて、うろんな表情を浮かべている。
「ぁ、いや、あ」
喉の奥が詰まり、取り繕うにも言葉が出てこなかった。咄嗟にスマホの画面を消していたのは、我ながら小ずるい。
「さっきから見てたでしょ、私のこと」
「は、ぁ、う」
詰んだ。
いや、待て、考えろ。そんな証拠、一体どこにあるんだ。冷静になれ。これは、あれだ。痴漢の免罪を被せられたようなものじゃないか。僕に非は無い。落ち着いて対処すれば、どうにでも。というか。
「に……に、日本語?」
「クォーターだから、私。生まれも育ちも日本人」
「……ぁ、そう、なんですか」
「じゃなくて。見てたよね、私のこと。じーっと」
「かか、勘違いじゃないですか」
どうして敬語なんだ、僕は。
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