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ふー、と彼女は甘い吐息をついて、僕のスマホを指差した。
「それに書いてるんでしょ、色々と」
心臓発作になっても変じゃない締め付け。呼吸が止まった。
彼女は何故か、バツが悪そうにして。
「私も同じだから分かるの。つまんないんだよね、自分が。だから他人で妄想しちゃう」
「え……?」
「君、誰とも待ち合わせてないでしょ。もう何日も、そこで人間観察してるの見てたから」
僕が誰かを観察しているように……僕も誰かに観察されていた?
「で、提案、なんだけど」
否定も肯定もしない僕を他所に、彼女は照れくさそうに微笑んだ。
「君さえ良ければ、一緒に人間観察しない? ほら、妄想しながら話し合うのって、面白いと思うから」
頭が真っ白で、何も考えられないはずなのに――驚くほど自然に、こくりと頷いていた。
今度からは、僕も待ち人を探すことになりそうだ。
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