冬の朝

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もう一度キャップを開けて、手のひらにクリームをのせた。 「おはよう。...ごめんね。やっぱりクセになってるのかな?」 視線を落とすのを見て、両手を出してしまった。 「やっぱりダメだね、私」 今朝は、恋人つなぎからクリームを塗り広げていく。染みこませるように、丁寧に。 「そんなこと」 ないよ、とは言えなかった。 冬のフローリングと、暖房にも当たらずに突っ立っている寝起きの体。その中で、手だけが温度を取り戻していく。 値段のいいハンドクリームは、香りも強烈だった。
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