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謎の感情の訪れ
遠い、遠い、放課後…
今は自習の時間。
私は二宮先生に教えてもらう予定の英語のプリントを解いていた。
分厚い灰色の雲が渦を巻きながら流れ、空に奇妙な円環模様を描いている。
私の沈んだ心のように。
キーンコーンカーンコーン……
授業が終わった。
好きだ。終わりを告げているようなこのチャイム。
私は、無言で静かに立ち上がる。
教室はいつものように騒がしい。
技術の時間で収穫した大根が、その騒がしさに悲鳴をあげているようだった。
もうすぐ、帰りの会が始まろうとしている。
ー30分後……。
行きたいな、2組。
見て欲しいな、プリント。
小さな願いは叶わぬまま私の足は2組ではなく2階へと進んでいった。
誘われたからー紗菜に。
紗菜は、私を見ると笑顔で手を振った。揺れる長い黒髪と大きな目が
「ー早く早く!」
と訴えているようだった。
紗菜と一緒に職員室前に行くと、そこには鈴木先生が立っていた。
私は慌てて笑顔をつくる。
・・・分からない。全く。
・・・自分の気持ちがわからない。
・・・まあいっか。気にしない。
スピーチの練習出来るんだし。
私の気持ちが分かったのか、鈴木先生は何かを感じ取るように目を細めていた。
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