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「久しぶり」  つい電話を取ってしまって、聞こえてきた声に内心舌打ちをした。  四年前に別れた元彼だった。 「……辰夫?」 「なあ、驚いた? 俺が急に電話して驚いたろ?」  何が楽しいのか、辰夫は得意げに言った。まるでとびきりのサプライズが成功したようなテンションだった。  わたしが返事をしないうちに、辰夫は一方的にベラベラと話し始める。わたしは半分も聞いていなかった。  思えばこのとき電話を叩き切ってしまえばよかったのだ。  わたしが何も言わないので我に返ったのか、辰夫は声のトーンを落とした。 「おい育美、聞いてる?」 「聞いてません」 「なんで? 久しぶりなのに……」 「……アンタ、何言ってんの? 何なの? もう切るから」 「ハァ!? ちょっと待てよ!」  わたしはイライラとため息を吐いた。 「わたしとアンタ、とっくに別れたでしょ。ハッキリ言うけど、もうアンタの声も聞きたくないの。っていうか、よく電話してこられたよね。そもそもこの番号どこで知ったのよ」  吐き捨てるように言うと、辰夫は黙った。
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