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 辰夫とはいい別れ方をしなかった。  大学のサークルがきっかけで知り合った。付き合う前は特に変わったところもなく優しかったけれど、彼氏になると次第に、辰夫はダメになった。  約束は平気で破る、借りた金は返さない。些細なことで激昂し、わたしを罵ることはしょっちゅうだった。挙げ句の果てに浮気をした。  そのくせ、わたしが別れを切り出すと、ゴネてどうしようもなかった。  その後はしつこくつきまとわれたりしたが、友人たちが協力してくれたので大したことにはならなかった。やがて辰夫の方も他に興味の対象が移ったらしく、それからは平穏だった。  別れてからすぐにアドレスを変えたのに。誰かが辰夫にわたしのアドレスを教えたのかと思うと腹立たしい。  今更何の用だ。  そう訊くと、辰夫はゴニョゴニョと何か言ったが聞き取れなかった。 「なんなの、ハッキリ言って」 「あのさ、お前今付き合ってるやついるの? いないよな?」 「ハァ? それ、アンタに関係ないよね」 「なあ、お前と会って話したいんだ。明日会えない? 六時に×××で待ってるから」  ×××というのは、付き合っていた頃によく行ったファミレスだ。 「行くわけないでしょ」 「ちょっとだけでいいから! なっ?」 「行かない」 「どうせ予定なんてないんだろ、絶対来いよ! 待ってるからな!」  そうまくし立てて、辰夫は電話を切った。  わたしは辰夫と別れたときのあれこれを思い出してしまい、かなり苛立っていた。  ――今更なんなんだ。まさか復縁してくれとか? 金の無心とか? どっちにしてもロクなことじゃない。  苛立ちのまま、スマホを乱暴にテーブルに置いた。
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