後章

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「よかった。 栗ちゃんなら気が合うんじゃないかと思ったんだ」 ああ、だから誘ってくれたのかな。 お隣の廊下で見た笑顔を思い出して、 私も少し笑いたくなる。 「それにしても時計屋さん、もしかするとちゃんと名前を覚えていたんじゃないでしょうか。 私のことも最後に呼んでたし」 「うーん、どうだろう。確かにありえそうだけど」 本当にそうだったなら、 今のんびりと歩いているお隣さんは、 あのお爺さんに始終遊ばれていたことになる。 けれどどうしてか、頷いた横宮さんからは、 時計屋さんへの悔しさも呆れも感じられなかった。 気づいてたのかな。 ふっと思う。 だから、訂正の声があんなに軽かったんだろうか。 でも、だとすると…。 「ひょっとして、 内心であのやりとり楽しんでました?」 「ん? いや、まさか」 怪しい。 何せ、夏休みには狐さんへひそかないたずら攻防戦を仕組んだ人だ。 次はどんな名字が飛びだすか、 相手の出方を楽しみにしてもおかしくない。
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