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リデルは開くはずのない防災扉の前で待った。腕を組み苛立ちは隠せていない。きっと開くはずだとリデルは信じていた。いや信じたかった。しかし、この防災扉はリデルの期待には応えるつもりはないらしい。
防災扉を睨みつけても、開こうと押しても引いても何の変化もなかった。リデルは深いため息ひとつついた。諦めの感情がリデルを支配する。どうやってもここから出ることは出来ないのだと。
のろのろと弾丸ケースの詰まったショルダーバックの位置を正し、ゆっくりと防災扉に背を向けた。開かない扉に用はない。早く出口を探さなければならない。これ以上、心が折れる前に行動を起こさなければいけない。
と、その時だった。
ドガァァァァンっと大きな衝撃音が背後からリデルの耳を襲った。反射的にリデルは振り返り音の正体を探る。
「な…なに?何が起きたの?」
リデルは誰に聞くでもなく呟く。呟くのと同時に、またドガァァァァンと衝撃音が辺りに響く。今度はリデルも音の出所を確認することが出来た。分厚い鋼鉄でできた防災扉は衝突した場所がぼっこりと歪んでいる。防災扉に何か凄い勢いでぶつかっているのだ。
リデルは恐怖に震え、その場に座り込んだ。
「あは…はは…いや…ちょっと…まって?え?…なんで?なに?」
乾いた笑いを発しながらリデルは頭を必死にフル回転させ状況を整理しようとしていた。
無意識に手を後ろをまさぐるように動かし後ずさりをしていく。視線は防災扉から外せない。パニックを起こしたリデルはどうにかこの場から逃げ出したかっただけだった。
こつん、と後頭部に何かが当たった。視線を当たった何かに向けると、それは商品棚だった。商品棚には流行りの靴が綺麗に陳列されている。役に立ちそうなものは何もない。
また何かが扉にぶつかる音が響いた。防災扉はさらに歪み、開口部分に少し隙間が出来た。扉の向こうは真っ暗だった。そこから獣のような息遣いが漏れ聞こえてくる。リデルは息をのんだ。
もう死ぬのだと思った。そう思いながらリデルは商品棚の下に手を滑りこませて何かを探すようにまさぐった。商品棚の下のスペースなど上に陳列されている靴の在庫しか置いていないのは考えなくてもわかる。それでも、何かないかと一縷の望みをかけて手を動かした。
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