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リデルはハッと目を覚ました。辺りを見回すと暗くジメジメとした細い通路に居ることが分かる。安全そうな路地の物陰で座って体を休めているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。手にはハンドガンが握られたままだ。夢から覚めたはずなのに、自分はハンドガンが必要な悪夢に未だ捕らわれ逃げ出せていない。
ショッピングモールの悪夢は思い出すだけで身の毛がよだつ。誰も存在しない広い空間で垂れ流される鎮魂歌。おぞましい化け物が自分の目の前に現れる。
ーー結局、あの化け物はどうなったんだろう?
リデルは不意に疑問がよぎった。ショッピングモールから、リデルは不気味な世界に入り込んでしまった。それは紛れもない事実だ。あの場所で感じた恐怖も焦燥感も夢ではないことをリデルは知っていた。だが、あの窮地に立たされた場所からどうやって逃げ出せたのかリデルは思い出せない。
ーーあんまり怖くて記憶から消しちゃったのかな?
そうリデルは自分に言い聞かせる。この問題を考えてはいけないと本能的に察したのだ。何か良くない事まで思い出してしまう危険があると、何故かそう思った。
リデルは気を取り直して、服に付着した土埃を手ではたいて落としながら、のっそりと立ち上がった。
「この路地…何処につながっていたっけ?」
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