2章 【不審者】

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 リデルは暗い路地の先を見ながら自分の知っている地図を頭に浮かべる。正しい地図ではないけれど、大まかな位置くらいは参考になるかもしれないと思ったのだ。  ハンドガンを構え辺りを警戒しながら歩き出す。ふと、ハンドガンの重さに違和感を覚えた。ハンドガンのマガジンはフル装填されていて心なしかショルダーバックも重くなっている気がする。居眠りをしてしまう前に自分は多くの敵をハンドガンで撃ち抜いた。弾薬も残り少なくなっていたし、マガジンは空になったまま装填しなおしたりはしていなかったはずだ。装備を整えた覚えなどない。 「あれ?」  リデルはまたもや自分の想定の範疇(はんちゅう)を超えた事態に頭をひねっていた。 「うわぁぁぁぁぁぁあ!」  突然、リデルが向かおうとしていた路地の先から聞き覚えのある男の悲鳴が聞こえてきた。リデルは、考えるよりも先に声のした方へと走り出した。自分の他に誰かいる、その事実に心が躍った。リデルは全力疾走で路地を駆けていく。路地の曲がった先に声の主はゾンビと共に居た。  「うわぁぁぁ!助けて!」  絶叫する男。しかしこれはゾンビに襲われているのだろうか?男の前でゾンビは何をするわけでもなくただ(たたず)み揺れている。リデルは肩で息をしながら、ハンドガンを構え混乱する頭を落ち着かせようと試みる。  ゾンビはそんなリデルの荒い呼吸音に反応したのか、くるりとリデルの方へと体を向けた。そのまま腕を上げリデルを捕食しようと歩き出した。ゾンビはもう男に興味をなくしてしまったらしい。
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