2章 【不審者】

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 どれくらいそうしていたのだろうか?リデルはひとしきり泣いたおかげか、少しだが冷静さを取り戻し始めていた。このまま此処に居ても何も解決しない。前に進む勇気をもう一度奮い立たせてリデルは立ち上がった。  アレックの方へ顔を向け、彼が変わらずその場で佇んでいる事を確認する。リデルが逃げ出してから彼は微動だにしていなかったのか、表情や立つ姿勢の変化は一切見られない。まるでショーウィンドウに飾られたマネキンのような無機物さだった。リデルの足取りは自然と重くなる。フラフラと歩き始め、アレックとの距離を縮めていく。  「まるでロボットみたいで怖い」  リデルは呟いた。その言葉はリデルが何か意図したわけではなく、自然と口から出ただけだった。しかし自分の言った言葉にリデルはハッとした。  きっとアレックは精巧に作られた【ロボット】なのだろう。彼の不可解な動きや言動がプログラムに基づいているのだとしたら辻褄が合うのかもしれない。このアレックというロボットは何らかの意図に基づいてリデルを教会に連れていくことをプログラミングされたロボット型の化け物なのだ。  そして【見えない壁】は自分を閉じ込めるために施された【敵】の【特殊な檻】なのだろう。そうか、だったらこの場にとどまるという選択は間違いだ。【敵の檻の中】から脱出するために何をすべきかを考えなければいけない。  リデルがとるべき行動は、まずは【見えない壁】の先に行く事。それにはアレックの誘導に従わなくてはならないだろう。危険が伴う行為だ。しかし、このまま此処に閉じ込められていても何も始まらない。ならば、行動を起こすべきだ。
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