3章 【不自然な生存者】

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 アレックと手をつないだまま歩く聖域は本当に何も居なかった。【ゾンビ】も【新たな(モンスター)】も出てこない。しかし半ば強制的に歩かされている道程は闇で満たされている。  路地から出られたが月明りすらない不思議な空間。道のわきにはおそらく建物があるのだろう。しかし、そのシルエットも確認できない。自分はどこを歩いているのだろうか?アレックの手を離したらこの空間を彷徨うことになるのだろうか? リデルは不安になった。  【教会】とはなんなんだろう、とリデルは思った。リデルの街には【教会】がない。どちらかというと【寺院】というような建物になり、この街に住む人間は【教会】という言い方はしなかったはずだ。  そんなことを考えていると、突然目の前に光が現れた。光の正体は巨大で重厚な扉。リデルが何か言おうとする前に扉はひとりでに開き、リデルは突き飛ばされる形で扉の中に吸い込まれていく。  後ろには誰もいなかったはずだ。アレックはリデルの手を握り隣にいたのだから、リデルを突き飛ばすなど不可能だ。そう思ってアレックの姿を見た。しかし、そこにはアレックの姿はない。手を握られてる感触はまだしっかりとあるというのに。
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