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「お前は人間か?」
男は訝しげに言った。その言葉はリデルの心を鷲掴みにしていた。この男はおそらくロボットではないと思えたからだ。
「多分、人間。少なくともコイツらみたいに狂ってはいないわ。逆に聞くけど,あなたは人間?」
リデルも男を睨みつけながら言う。少しでも気を緩めると顔が綻んでしまいそうになる。やっと交わされる会話のキャッチボール。しかし、油断してはいけない。まだ彼がロボットだという可能性が残されているのだから。リデルは彼の出方を観察する必要があると思った。もしも彼が、ロボットならばリデルがプログラムにそった返答をしなければセリフをリピートし続けるはずだ。
対峙している男は男でリデルを観察しているようなそぶりを見せていた。じろじろと嘗め回すように視線を這わせ、何かを吟味している。その表情には人間っぽさが滲み出ている。
結果、2人は睨みあったまま動けずにいた。長い沈黙が2人の間に訪れた。この聖堂に彼らの間に割って入るような人間はいない。ロボットの出る幕ではないのだ。
「オーケー…このままお互いの腹を探り合いをしたところで意味がなさそうだ。時間なんて概念この世界にあるかどうか分からんが、俺は時間を無駄にしたくない質なんでね」
長い沈黙を破ったのは男の方だった。
「そうね、その意見には私も賛成。」
リデルは言いながら腰に手をあてやれやれといった表情を浮かべた。
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