20人が本棚に入れています
本棚に追加
「おいおい、リデル。なに笑ってんだよ?怒るか笑うかどっちかにしろ。忙しい奴だなー。」
ディックは茶化しながらリデルの青い瞳を覗きこんで笑う。覗きこまれたリデルは慌てて目をそらした。間近で見るディックは思ったよりも整った顔をしている。粗野な雰囲気はあるものの笑顔が柔らかい。先ほどまでリデルに向けていた鋭い眼差しはもう何処にもなくなっていた。
リデルは顔がカァァと熱くなるのを感じていた。
ーーいや、何で?大した会話もしてないのに…え?あれ?…いやいや、ちょっと待って。
リデルはディックに抱き始めた感情に戸惑っていた。リデルは極度の緊張状態にあった。ディックが現れたことにより、その状態から一時的にとはいえ解放された。この事実は揺るぎようがない。リデルの窮地を救いに来たヒーロー。それがディックなのだとリデルの心は認識してしまった。
リデルは、高揚した顔をディックから隠すように俯く。思考をまとめようと必死だ。10才は年上だろう出会ったばかりの名前しか分からない男に惚れるなんて何かの間違いだとリデルは思いたかった。自分には思いを寄せるクラスメイトがいたはずだ。それはこの男ではない。
最初のコメントを投稿しよう!