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雲が空を覆い、月の光が懐かしく思えるほど路地は闇が支配していた。リデルという名の少女は路地の壁に手をつきながらゆっくりと進んでいく。その足取りはとても重い。
この街は、リデルの生まれ育った故郷のはずだった。しかし、彼女の覚えている街並みと今いる街の風景は違っているようで、頭の中で思い描く地図はてんで役に立っていない。
近道を通ろうとすれば、瓦礫や見覚えのない建物が道を歪め、また別の抜け道を通ろうとすれば手に負えそうもない【敵】が行く手を阻んでいる。瓦礫を登ろうとしても手をかけるそばから崩れて諦めざるを得ない。仕方なく迂回して通れる道を探さなければならなかった。
少しの距離を進む事に、多大な労力と時間を強いられるのだ。リデルは悪態を何度ついたか分からない。
ただ不思議とお腹は減ることはない。それでも限界だった。
「私は一体、どこに向かってるのよ!もう疲れたぁぁぁぁぁぁ!」
リデルは路地に膝を抱えて蹲り、声の限り叫んだ。他に誰がいるわけでもない。
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