1章  【狂った空間】

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 誰もいないショッピングモールを、ただ歩き回るだけで弾丸ケースは無尽蔵に増えていく。両手に抱え崩さないようにバランスを取りながら歩くのも一苦労だった。  もう持てないと思った瞬間、近くに手頃なショルダー式のカバンがあるのに気が付く。そのカバンをひっつかみ、集めた弾丸ケースをドサドサと放り込んでいく。心なしか両手が自由になると重さが気にならなくなったような錯覚を覚えた。 「…弾ばっか…これって何の役に立つっていうの?てゆーか、なんで目立つ所においてあんのよ!?危ないじゃないのよ!」  リデルはむやみやたらと弾を集める自分にも、この不条理で意味が分からない現状にも嫌気がさしていた。戦車に使う砲弾なら単体で役に立つような事を映画で見たような気がする。けれど、この【ハンドガンの弾】という物は、単体で使用できる方法がわからない。【ハンドガンの弾】なのだから【ハンドガン】が必要なのは明白だとリデルは思った。  根本的な話、リデルの生活するこの街がある国は銃社会ではない。世界的に強大な国をお手本にしているが、大陸の片隅にある小さく平和な国だ。    銃器とは警察とか軍が所有するもので一般の人間には縁遠い代物だ。銃?ナニソレオイシイノ?  そういうお国柄の背景を完全に無視して【弾丸ケース】は色々な場所に置いてある。もしこれが、本物でドッキリでないのなら…このショッピングモールはアンダーグラウンドな深い闇社会と繋がる違法店ばかりが集まるヤバい店という事になる。  そこまで考えて、リデルは自分に失笑した。もし違法店だったとしてどうだと言うのだろう?それが分かったところで現状が変わるとも思えない。
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