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「青葉志織さんだ」
その言葉に、俺は思わず椅子を見つめた。
それは確かに青葉さんの椅子だった。
うちのクラスは奇数列に女子が座っている。俺は今そこから適当に椅子を選んだのだが、座席順を思い浮かべるとたしかにそれは青葉さんのものだった。
でもどうしてこの椅子が彼女の椅子だと分かったのだろう。
不思議に思っていると、河野は真剣な顔をしてこちらを向いた。
「実は僕、椅子に残されたお尻のぬくもりを解析して誰が座っていたかを当てられる〝お尻ぬくもり診断〟の能力者なんだけど」
「変態じゃねーか」
意味が分からなすぎてつい思ったことを口に出してしまった。
河野は少し落ち込んだように俯く。
「ごめん、取り急ぎこの能力のことを証明したくて」
「そう……。……で、それが何?」
「実は相談があって」
河野はもごもごと言いにくそうにしている。
しかし少し間を置くと、意を決したように顔を上げた。
「この能力で、ちょっと問題のある人を見つけてしまったんだ。それがまさしくこの青葉さんなんだけど……木ノ下くん、僕に協力してくれないかな」
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