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それからもばあちゃんは、俺と顔を合わせる度「外には出ろ」と言ってきた。
「外に出なきゃよ、いろんなもん見逃すんだで」
あまりのしつこさに根負けしたのか、うるせーな人の気も知らねーでとムキになったのかは覚えてないが──。
俺は、外に出た。
そしてその勢いのまま、学校にも行くようになった。
周りの奇異な視線や雑音なんか気にも留めず、ひたすら通い続けた。
驚いたことに、俺みたいなのに興味を持った物好きな友達なんてのも何人か出来た。
そして、無事に高校も卒業した。
で、家業を継いで、今に至る。
高校出なきゃ家業は継がせねぇと親父には散々言われてたから、もし高校を卒業しなかったら俺は家を追ん出されていただろう。
今頃路頭に迷ってたかもしんねぇ。
店継ぐよりマシな人生が送れたかもしんねぇけど、まぁそれは言いっこなしだ。
俺はこの仕事が気に入ってるし、性にも合ってる気がするんだ。
つまり俺は、伊崎のばあちゃんの言葉に自然と人生の後押しを受けてたってわけだ。
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