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「学校には行かんでええ。ただな、外には出ろ」
「………」
「外には出ろ。今度花火大会あんだろ。あと今商店街で福引きやってんだろ。あとな、角のカワモトさんとこ閉店セールやんべ。あとな、あとな──」
……全く興味が無ぇよ。
何を思ったのか、ばあちゃんは指折り数えながらご近所のイベントの数々を紹介して俺を外へ誘い出そうとしてるらしいが、全てに於いて興味が沸くはずもない。
ちなみにカワモトさんとこの閉店セール、かれこれ三年はやってるからな(親父が言ってた)。
ああ、ああ、と適当に頷いてると、ばあちゃんは指を折ったまま、杖の柄をトントンと叩く。
「あのな、外に出なきゃいろんなこと見逃すんだで」
「………」
「桜の開花もな、川でエイが打ち上げられんのもな、蝉の小便もな」
いや、蝉の小便とかむしろ見たくねぇし。
「それからな、あれ、ラジオな。こないだ『街角突撃放送局』が駅前通りロケしててよ」
だから興味無ぇから。知らねーし街角何とかとか。
俺は、ああ、ああ、と適当に頷いて「蝉より俺の小便が漏っちゃうから」と言ってその場を切り抜けた。
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