拝啓、凛太郎様

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その日なのか、はたまた明くる日なのかは記憶が定かではありませんが、気付くと目の前で凛太郎様が眠っておられました。 あぁ、嫌な夢でも見たのでしょう。そう思い、お傍に寄り添おうと歩みを進めました。 近付く事にほのかに香る、凛太郎様の匂い。そしてそれを上回る病院特有の匂い。 凛太郎様……?凛太郎様…………? 声をおかけしましたが、凛太郎様は動きません。(わたくし)を抱き締めてくれた腕と優しく撫でてくれた手は、胸の前で固く結ばれ動く事はありません。 (わたくし)を見つめてくださった目は開く事はなく、真白(ましろ)と呼んでくださった口も固く閉ざされておりました。 何よりも、凛太郎様のお身体からは一切のぬくもりを感じる事が出来ませんでした。 あぁ、この方は(わたくし)の知っている凛太郎様ではない。そう、思うようにしたのです。 「真白(ましろ)……」 凛太郎様のお姉様が泣いておられます。 「真白(ましろ)……凛太郎は……」 お母様は、凛太郎様は事故で頭を強く打ち、帰らぬ人になったと説明してくださいました。 そんな訳はございません。(わたくし)に待てと仰った凛太郎様はきっと帰って参ります。
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