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クリスマスイヴに教会に来るのなんて初めてだ。
お姉さんもキョロキョロしている。
二人で硬い椅子に腰掛ける。
前にはクリスマスツリーが飾られている。
小さな天使の飾りがかわいい。
賛美歌が始まった。
それから神父さんのお話。ちょっと長いお話だったけど、ところどころズキンと来ることがある。隣を見たら、お姉さんが涙ぐんでいる。見てはいけないものを見てしまった気がして目を逸らした。
お話が終わって、白い服を着たいろんな年代の人が並ぶ。おばあちゃんやおじいちゃんもいる。小さい子も。
合唱団の皆さんが歌う『きよしこの夜』は下手くそで時々音程ずれるけど、なんだか心に沁みてくる。
その後のクリスマス会には出ずに、私たちは教会を後にした。
外は雪が降っている。
なんて皮肉なホワイトクリスマス。
「雪降ってきたね、雪ちゃんと過ごすホワイトクリスマスって、ダジャレみたいだな」
お姉さんがポツンと言った。
なーんで知ってんだあ?
「どうして知ってるんですか?!私の名前!」
神か?
「表札にあった。雪、ユキちゃんでしょ?」
表札・・・盲点だったな。
雪は同じ名前のくせに、全然優しくなくて寒い。
心も、手袋のない手も。
擦り合わせた手にハァ~って息をかけたとき、お姉さんが右手を繋いでくれた。
「合唱団、下手だったね」
頷きながら、右手があったかいと思っていた。
駅前に来たとき、
「じゃあね、教会連れて来てくれてありがと」
お姉さんが離した右手が、急に冷たく感じる。
「あの、ケーキ一緒に食べませんか?[angel]のです」
お姉さんの歳の人も、魅力に感じるのかな。
「家族で食べなよ、写真の」
「だから、今日帰って来ないんです。明日も、明後日も」
私の目から、ポロンってなにかが落ちた。
お姉さんは、また慌てて近づいてくれる。
「わかった!わかったから泣かないで!」
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