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ちょっとだけ心痛いのは、さっきの神父さんのお話のせいかもしれない。
『他人の痛みがわかってこそ、本当の優しさを持つ成熟した人間と言えます』
お姉さんはビールを飲んでいる。
話を聞き終わって、私にもチューハイを持ってきてくれる。
「まあ、飲みたまえ」
お姉さんに言われて、プシュとプルトップを開けてグイッと飲んでみた。ジュースみたいだ。でもちょっと苦い。
「さすが[angel]美味しいねぇ。私的にはユキちゃんの彼氏に感謝かもね」
お姉さんはそう言ってフフと笑う。
「大人になったら食べ放題じゃないんですか?[angel]のケーキだって」
大きく取ったケーキをパクリと食べる。オトナっぽい控えめな甘さとちょっとお酒の香りが口の中に広がる。
「私なんかは、宝クジでも当たらなきゃ無理だな」
お姉さんはそう言ってからパクリと食べた。
「ほんと貧乏だもん。仕事もダメだしね」
そだ!オトナなんだから仕事してるよね。
「なんの仕事してるんですか?」
私の質問に、お姉さんは視線を逸らして小さな声で答えてくれた。
「一応、歌手」
かーしゅー?
「歌、歌う歌手?」
「まあ、そう」
「テレビとか出てます?」
「いや、無理。ドサ廻りの演歌歌手だから」
ドサ廻りってなんだ?
お姉さんは、フォークを置いてビールを飲んだ。グイグイと。
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