4/6
前へ
/18ページ
次へ
「高校生の時にアマリア・ロドリゲスって人の歌を聞いてさ。もういない人だけど感動してね、いろんな人に聴いてほしくて。彼女みたいに貧乏から這い上がってさ。そんな風になりたいなって。死んだあとも人の心動かす歌、残したいなって。 でもダメだ。誰も知らないし、事務所もダメって言うしさ。歌わせてもらうために、プロデューサーと寝たり、レコード会社の人と寝たり、他の事務所の偉い人と寝たり。でもダメだったんだよね。挙句に男に捨てられてさ。なんなんだろう、私の人生。なんで故郷捨ててここにいるんだろうってね」 「そりゃダメですよ!」 私のひと言に、お姉さんはビールの缶を置いて目をパチクリする。 酔っ払らいながら、ソウくんのことを思い出していた。 そうだよ、頑張ってるって言いながら、ラインしたらいつも『寝てしまってた~』って返ってきた!勉強しないで寝てても、賢くならないっつうの! 「寝てばっかりじゃないですか!寝てても、歌上手になりません。練習しなきゃ。寝てる時間で練習しなきゃ。睡眠学習なんてウソですから!みんな寝るの我慢して勉強したり、練習したりしてるんです!寝てて勉強できるようになったら、受験なんて意味ないですから!」 フォークをかざして叫ぶみたいに言ってた。私、酔っ払いだ。 でも、お姉さんは急にフいた。     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加