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「高校生の時にアマリア・ロドリゲスって人の歌を聞いてさ。もういない人だけど感動してね、いろんな人に聴いてほしくて。彼女みたいに貧乏から這い上がってさ。そんな風になりたいなって。死んだあとも人の心動かす歌、残したいなって。
でもダメだ。誰も知らないし、事務所もダメって言うしさ。歌わせてもらうために、プロデューサーと寝たり、レコード会社の人と寝たり、他の事務所の偉い人と寝たり。でもダメだったんだよね。挙句に男に捨てられてさ。なんなんだろう、私の人生。なんで故郷捨ててここにいるんだろうってね」
「そりゃダメですよ!」
私のひと言に、お姉さんはビールの缶を置いて目をパチクリする。
酔っ払らいながら、ソウくんのことを思い出していた。
そうだよ、頑張ってるって言いながら、ラインしたらいつも『寝てしまってた~』って返ってきた!勉強しないで寝てても、賢くならないっつうの!
「寝てばっかりじゃないですか!寝てても、歌上手になりません。練習しなきゃ。寝てる時間で練習しなきゃ。睡眠学習なんてウソですから!みんな寝るの我慢して勉強したり、練習したりしてるんです!寝てて勉強できるようになったら、受験なんて意味ないですから!」
フォークをかざして叫ぶみたいに言ってた。私、酔っ払いだ。
でも、お姉さんは急にフいた。
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