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「そうだよね、寝てちゃダメだよね、練習しなきゃね。それでたくさんの人に聴いてもらう機会作らなきゃね、今日の合唱団さんみたいにね、下手でも」 「下手じゃないですから!お姉さん上手です。『きよしこの夜』歌ってください!」 酔っ払いの私をやっぱり笑いながら、お姉さんは歌ってくれた。英語で『サイレント ナイト』。 伴奏も何もないのに、お姉さんの声は優しく震えて、声の余韻が伴奏の役目もしてるみたいだった。 「~Sleep in heavenly peace .」 歌い終わったお姉さんに思いっきり拍手をしながら、ポロンと溢れた涙はさっきまでの涙じゃないよ。 お姉さんも泣かないでって言わなかった。でもお姉さんもちょっと泣いてる。 「ねぇ、ユキちゃん。慌てなくていいよ。大切なもの、プレゼントなんかにしない方がいいよ。そんな気持ちになったら、そうなるんだから。だからゆっくりでいいんだよ。それから、多分、一番落ち込んでるのは彼氏じゃないかな、自信あったなら余計にさ。だから応援してあげてよ、今、私にくれたみたいな真っ直ぐなエール、心の中ででも言ってあげてよ」 そう言って最後のビールを飲み干している。 ハッとしていた。ソウくんが一番ショックだよね。きっと今頃、必死のパッチで勉強してるんだよね。 怒ってばっかりいて、頑張ってってラインをしてないことに気がついた。     
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