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「マスター、アイツにお仕置きしないんですか?」
朝食の後片付けをしながらイシュカが言う。
「ふむ。十中八九アイツの仕業だろうけどまだ確証がないからね。疑わしきは罰せずさ。」
「むーーー。」
全く納得いかない!と顔で主張しつつも唸るだけで何も言わない。
「どうせアイツのことだから自分から尻尾をだすよ。」
よしよし、と宥めるように頭をなでながら言っているそばから
「あー!今日は寒いなー!!こんな日は薪がたくさんいるよなー!朝起きて薪が1つもなかったらそりゃー辛いだろーなー!」
これみよがしなしゃがれ声が聞こえてきた。
「アイツめー!」
ぷんすか怒るイシュカはすぐに部屋を飛び出そうとした。
が、僕が尻尾を掴んだのでクンっと体が仰け反った。
「うゃっ」
「まぁまぁ、あんなに分かりやすい泥棒も珍しいし、わざわざ自分からこうやって言ってくるなんて、なんだかもう、呆れるのを通り越して可愛いじゃないか。」
「か、可愛いー!?マスター!正気ですか!!?マスターだってあんな寒い思いをして、ただでさえ寝起きは機嫌が悪いのにさらにイライラさせたアイツが可愛いって言うんですかー!?」
「どうどう。イシュカは素直だからね。嬉しいときも怒るときも真っ直ぐ感情のままでそんなイシュカも可愛いよ。」
そう優しく言うとイシュカはボッと顔を赤くしてテーブルの下に隠れてしまった。
コンコン
「たーのもー!」
ドアはノックしてもこちらの返事は待たずにしゃがれ声の主はズカズカと中へ入ってきた。
「邪魔するぜー。」
そう言って勝手に僕の向かい側に座る。
「やぁ、おはよう。キース。今朝は寒いね。」
「ふふふ、そーだなー、アロガ。だが俺は今朝とってもぬくぬくだったぞ。ガハハハハ」
「マスターがおはようって言ったんだからお前もおはようって言えよキース!」
僕の肩越しにイシュカが言う。
「おー、おはようイシュカ、コーヒーをくれよ。砂糖たっぷりで頼む。」
「やなこった!」
イーっと歯を見せているイシュカを嗜めながら「入れてあげなさい。」と言うと、
「マスタぁ。。。」と耳と尻尾を垂らしてショボンとしながらコーヒーを入れにいく。
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