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「さてさて、」
コホンと軽く咳払いをしてコーヒーを口許に運びながら話を続ける。
「人の家のものを勝手に持っていくのは如何なものかな?キース。」
「おいおい、なんのことだよ。俺にはさっぱり分からねーな。」
「あくまでしらを切るつもりですか。」
お互いに読めぬ顔で微笑み合う。
穏やかな空気のなか、イシュカが苦々しい顔でコーヒーを運んできた。
「どーぞっ!」
ガチャンと音を立ててキースの前に置く。
「うーん、良い匂いだ。」
クンクンと長い鼻でコーヒーの香りを堪能した後、ズズっと一口。
「しょっぱ!!うげー。おぃイシュカ!やりやがったな!!」
「あれれー?お砂糖とお塩間違えちゃったのかなー?ごめんねキース。」
くるん、くるん、と円を描くように飛びながらとぼけたようにイシュカが言う。
「おい!アロガ!使い魔の教育がなってないぞ!」
テーブルの上の布巾で舌を拭きながらキースが怒鳴る。
「これは申し訳ない。君に失礼なことをしてしまったからには君のマスターにもお詫びに行かなければね。」
「い゛!いやー、わざわざそこまでしてもらう程じゃねーよ。イシュカもちょっと間違えただけだもんな。な?」
慌ててそうイシュカに問うキース。
でもイシュカは申し訳なさそうな顔をして(尻尾は上を向いてフリフリと揺れながら)僕に言う。
「そうだね、マスター!一緒にキースのお家に謝りに行ってくれる?」
「もちろんだとも。」
「わー!!!」
慌ててキースが入口の木戸に立ち塞がる。
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