ミルキーブルー

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ミルキーブルー

「有名な秘湯があるんだけど、行かない?」  温泉へのお誘いは有り難いんだけど……。旦那の台詞に目眩がした。 「私が中学の時にね、超真面目な科学の先生がいてね。ある日突然何を思ったのか雑談を始めたのよ」 「へぇー。どんな?」 「そんなの忘れた。ただ先生が最後に言った言葉は鮮明に覚えてるのよ」 「何?」 「雑談を終えた先生は『これは有名な逸話です』って言ったの」  「……イツワって何?」  そこからか、と気が遠くなった。 「逸話っていうのはね、殆ど人に知られていない話って意味よ」 「ふーん」  絶対に旦那は分かっていない。 「だから、知られていない話なのよ。有名な訳無いでしょ」 「あ、成程」  旦那は感心してウンウン頷く。  しかし自分の言った台詞に関係しているとは露程も思っていない。 「じゃあ秘湯って何?」 「ん? 秘密の温泉」 「秘密なのね、じゃあ有名な秘湯って何?」 「ん? さて、何だろう?」  旦那は漢字も知らないし字も汚い。  言葉の矛盾にも気が付かない。  国語能力はゼロに等しい。  なら何故私はこんな人と結婚したのか?
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