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僕が良の家に最後に行った記憶はおそらく小学校5年生あたり、僕が10歳、良が15歳の時だっただろうか。
それ以来行っていなかったのだが、その翌年あたりである良の高校入学あたりから町田家は壊れ始めたらしい。
父が急に精神的に不安定になり、仕事をやめてしまい、酒とギャンブルに溺れたらしかった。
それ以来良の母親は必死にパートを増やして家計を支え、母のために良自身もバイトをしていたらしい。
学校が終わってすぐ夜まで、休日には朝からずっとバイトに明け暮れていたらしかった。
そんな一面があったとは全く気付くことが出来なかった。僕が子供だったからか、良がそう感じさせないようにしていたのか。今となってはわからないけれど。
良の父親は良と母親が必死に稼いできたお金を平気でパチンコに溶かすようなことが、1度や2度ではなくよくあったらしい。
良は本気で20歳になったら権利を使ってやろうと目論んでいたらしかった。
離婚や権利行使を迫っても煮え切らない態度を取る、まだ完全に父を見切れていなかった母に代わって。
そんなことを感じ取ったのか、あるいは虫の居所が悪かったのか。良の20歳の誕生日まで1年を切っていたタイミングで、良の父親は爆発してしまった。
勉学でも優秀だった良は奨学金を借りて地元の国立大学へ進学しており、お金の工面の為に深夜までバイトをして帰った良が見たのは血だらけで倒れる母とその服をまさぐり金を探す父の姿だった。
金縛りにあったように動けなくなった良に対し、その姿を認めた父が言い放った言葉は
お前、金ねえの?あるなら早く出せ
だったらしい。
激怒した良は父に殴り掛かった。
体格的にはすでに自堕落な生活をする父よりも良が上だったのだが、金属バットを持っていた父に下半身を強打されて良は動けなくなった。
それでも執念で抵抗し続けたことによって近所の人が警察を呼んだことで父は逮捕された。
良と母親はすぐに病院へ搬送された。
しかし母親は必死の治療も及ばず死亡。良も下半身不随となってしまった。
これが僕がその後良本人からきいた事の顛末だ。
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