20歳

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一度、父に聞いたことがある。 父は権利を使ったのかと。 父は優しい人だった。お人好しというべきかもしれない。 学生時代から頼み事は断れず教師からの信頼も厚く、崩壊気味の生徒会を死ぬ気で働いて活動的なものにしたり学外サークルで交渉事などの面倒ごとはすべて受け持ってきた。 社会人になってもそれは変わらず、父は頼られ結果も出した。最後には仕事が出来た父を上司が疎ましく思われて、父は身に覚えのないミスを押し付けられ責任を負わされた。 そのミスは父が可愛がっていた後輩のミスであったことは気付いていたらしい。しかし、上司に脅されでもしていたのだろうか。その後輩が父を庇うことはなく、様々父を頼っていた同僚も父を助けることはしなかった。 そして自然父は仕事を追われた。 そんなことを母がよく話してくれた。 そんな人だからわたしは彼と結婚したの、と。 結局、本質的に仕事が出来た父はやめた会社よりも大きな会社に転職し、そこでキャリアを積んで成功した人間といえるだろう。 そんな父が消したいと思うようなことがあったのか、純粋に疑問に思ったのだ。     
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