20歳

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20歳の誕生日を1週間後に控えた12月5日。体を刺すような痛みにも似た寒さの中午前の講義を終えて僕は総合病院に来ていた。 この場所にはもう2年ほど週に3,4回は通っているので、慣れたもので手早く目的地へ向かう。 道すがらすれ違う長く入院している心臓病を患っているおじいちゃんや、看護師とあいさつを交わし目的である6階病棟の個室部屋へと到着する。 扉を開くとちょうど昼食を終えたところだったのか、お盆を持った橋本さんと扉のところで鉢合わせる。 「あれ、今日は斎藤さんが来られる日でしたか。おめかししてくればよかったかしら」 橋本さんは八重歯を見せてニシシと笑う。 今年からこの病院に配属された橋本さんは年が近いこともありこうやって軽口を言い合うような仲にすぐになった。 ぱっちりとした目、笑うと浮かび上がるえくぼと八重歯、小さく細い体から僕と年齢が変わらないような印象を受ける。 若く見える、というよりは幼く見られがちというところだろう。 そんな橋本さんの軽口に対して病室の方からからかうような声音で声が聞こえる。 「俺の病室でイチャイチャするなよお二人さん。やってらんねえぜ」 「良、やかましいぞ。お菓子やんねえぞ」     
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