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その声に対して僕も応え橋本さんの脇を抜けて病室へと入る。
短く清潔感を携えた短髪、男らしく鋭い眼光、シュッとした輪郭に高く張った鼻、僕と違って俗にいうイケメンである町田良の姿を確認する。
良はおどけるように声を高くしてふざける。
「そんな殺生な! 」
そんな僕らの様子を微笑ましく笑顔を携えて橋本さんは手を振って仕事に戻っていった。
時々見せる年齢通りの大人な一面を見ると少しドキっとしてしまう。
「橋本さん可愛いし拓海ほんとに狙ってみろよ。あの人拓海が来る日狙ってこの病室来てる節あるぞ、いやこれまじで」
「嘘つくな。単純に担当が決まっててたまたまだろ」
持ってきたチョコ菓子を開けて良のベッドの隣に置いて食べ始める。
「テレビ何見てたん?」
「えーと、この時間はいつものワイドショーだな」
「ババくせ」
「うっせ」
なんてくだらないやり取りをしばししつつしばらく黙ってテレビを見ていた。
お互いに話さなければいけないことがあることをわかっていながら、その時が近づいていることは重々承知の上でこの頃は触れることが出来ることが出来ていなかった。
どれだけの時間黙っていたのだろうか。外ではパタパタと看護師が慌ただしく動く音が聞こえる。
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