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重い空気の中今日も核心には触れられずに終わるのかな、と思いつつ僕も勇気が出ずにいると良が重々しく口を開いた。
「ちょうど来週、拓海誕生日だよな……」
俯いて良は言う。か細い声でそれは僕に語りかけたのか、それともつぶやいたのか判別がつかないほどであった。
しかし長い付き合いだ。この言葉が僕に向けられた言葉であることはわかる。
「そう。ちょうど来週だよ。20歳になる」
僕も答える。特にそうしようとしたわけでなく自然と低い声になる。
俯いていた良が僕の方に視線を向け、しっかりと僕の目を見据えていった。
「約束、覚えているよな」
そう言って良は再び視線を落とす。
自身のもう二度と動かない両足を見ながら重々しく言った。
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