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「本当に,そのネイルをアンタがした…って言うなら,その証拠を見せて下さい!!そしたら,“ 何の取り柄もない女…”って言葉を取り消してあげてもいいですよ?ねっ,みんなもそう思うわよね?」
強気発言をし続けていたスタッフが,懲りずにあたしに向かって言って来る。
それを聞いていた璃桜くんが少しだけグズり出した事が分かり,あたしは,璃桜くんの耳元で,“ ママが,もういいよ。って言うまで,耳塞いでて…”っと囁くと,璃桜くんは,『コクンッ』っと小さく頷いて,両耳を塞いだ。
「…あのっ,1ついいですか?」
「何よ?あぁ〜分かった!怖気付いて,慎さん…オーナーと別れ…離婚する決心が出来た…とか言うんでしょ!最初からそうしてれば良かったのよ。」
「………」
「…違います!あたしの事をどう思おうが,そんな事どうでもいいんですよっ!!ただ,璃桜が悲しむ様な事…不安がる様な事を言うのは,止めて頂けませんか?」
「はぁ〜?何を…偉そうに…っ!!」
「分からないんですかっ?今も璃桜は,泣きそうになってるのを我慢してるんですよ!こんな小さな身体で…。あたしは,璃桜が悲しむ様な…不安がる様な事だけは,誰が相手であっても許しません!」
あたしがそこまで言いきるとは,慎さんも思ってなかったのだろう…微笑みながら,あたしと璃桜くんを包み込む様に抱き締めた。
「慎ちゃ……っ」
「もういい。もういいよ。ありがとう」
あたしは,涙が出そうになった…。
「みんなもいい加減にしてちょうだい。彼女を妻に選んだのはワタシよ。文句があるなら彼女にじゃなく,直接ワタシに言って来なさい!」
「それな。どんな男でも,愛してる女性の事を色々言う奴なんかみんな嫌がると思うぜ?少なくとも,オレは,パス!!」
郁翔さんは,サロンスタッフに向かってそれだけ言うと,腕を組んでカウンターにもたれ掛かり瞳を綴じた。
「璃桜,もういいよ」
「んゅ?」
璃桜くんは両耳を塞いでいた手を外す。
「ココちゃん,時間は大丈夫なの?」
「あ…。いいんです。今日は,璃桜の傍に居たいから…仕事場(バイト先)には,行けなくなった…と連絡します」
「だっ,大丈夫なの?そんな事して…」
「いいんですよ。今はとにかく璃桜の傍に居て安心させてあげたいから」
慎さんに微笑み掛けた後,あたしは,バッグの中からスマホを取り出して,璃桜くんを抱っこしたまま,どうにかこうにか,編集長にLINEを送ろうと苦戦をしていたら,璃桜くんは,スマホが落ちない様に支えてくれ,何とか送信する事が出来た。
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