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「十時さん,おはようございます。今日は,すみませんでした。ココちゃんに振る仕事があったんですよね?急な休みで,ご迷惑を掛けたのでは…?」
{いや,大丈夫ですよ。逆に,こっちが無理を言ってたので…申し訳ない。}
「そんな事ないですよ。璃桜も一緒でいい…と言って頂けて,どんだけ有り難い事か…。」
慎さんと編集長が,あたしのスマホ越しに頭を下げあって居る。
{あっ…ところで,桜華縞さん…今日なんですが,都合のいい時間帯とかありますか?}
「都合のいい時間帯ですか?」
{そうです。取材の打ち合わせをしたいのですが…}
「あぁ〜…この前言ってた取材ね。ちょっと待って下さいね。予約の確認して来ます。」
慎さんが,あたしのスマホから離れた時だった。
「ママ,おうちかえっちゃら,なにちてあしょぶ?」
「何して遊ぼう…あっ!!でも,遊ぶ前に,先にお風呂入ろうね。」
「おうろ?」
「そうよ。汗でベタベタだからね。汗流そうね」
「……。」
何の反応もしない璃桜くんを不思議に思い,顔を覗き込む。
「…んと…おうろは,パパもいっちょじゃないと,や!ちゃんにんではいうの」
「……分かった。お風呂は,パパが仕事が終わって,帰って来てから,一緒に入ろうね。でも,汗でベタベタ状態のまま居て,風邪ひいたらいけないから,汗だけは,帰ってから流そうね。」
「あ〜い」
{…おーい…盛り上がってるところすまんが…}
「あ…編集長…」
あたしは,ビデオ通話が繋がったままだという事をすっかり忘れていた。
{今の会話…どういう事だ?しかも,璃桜くんが,五十嵐の事をママって……?}
「あ…えっと…それについては,あたしの口からは…」
あたしが言い淀んで居ると,“ あら,別にココちゃんの口から伝えても良かったのよ?”っと予約を確認しに行ってた慎さんが横から口を挟む。
{あ…桜華縞さん…あの…今の五十嵐の……}
慎さんは,あたしの肩を抱き寄せて,画面越しの編集長に改めて向き合う。
「十時さん,画面越しに言うのもどうかと思ったんだけど…改めてお伝えさせて頂きます。ワタシと五十嵐 心は,昨日入籍し,夫婦になりました。」
{…えっ…えぇっ?}
「詳しくは,今日の15時に…」
{15時…では,15時に,そちらに伺います}
「了解。じゃぁ,時間空けとくわ」
慎さんは,話し終わった後,ビデオ通話を切り,あたしにスマホを渡してきたのだ。
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