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「ありがとね」
「…えっ?」
あたしは,いきなりのお礼に首を傾げる。
「何も言わずに居てくれたのは,勝手に話して好き勝手に記事にされたらいけないと思ったから,話さずに居てくれたんでしょ?」
あたしが,バレたか…っと言う顔をすると,慎さんはあたしの頭を『ポンポン』っとしながら,“当たり前じゃない。分かるわよ”と,微笑んだから,あたしも微笑み返した。
「さて,じゃぁ〜あたし達は上(家)に戻るね。」
「パパ,おちごとがんばっちぇね。」
「ありがと〜。ココちゃん,璃桜…お昼休憩,うまく取れる様にするから,3人でお昼食べましょう」
璃桜くんの頭を撫でながら,そう慎さんが言った時,『カランコロンカラーン…』っと扉が開く音がサロン内に響く。
「あら,ヤダわ…もうOPEN時間だったのね…」
「じゃぁ,あたし達は,上(家)に戻ろうね」
抱っこしたままだった璃桜くんは,“あーい。おうちかえっえ,おうろはいゆー”っとあたしに頬を擦り寄せて言って来た時だった。
「あら?もしかして,心さん?」
あたしは,声を掛けられた方へと向きを変える。
「あ…乃木様っ!!」
「ちょっとヤダ…心さんが居るなら,娘…学校休ませてでも連れて来たら良かったぁ〜」
「えっ…ぃゃ…あたしは…」
「えっ?違うの?! てっきりここで働く事になったのかと思ったのに…残念だわぁ」
乃木様が慎さんの案内で,席の方へ向かおうとした時,乃木様のある指の爪に目が止まり,思わず乃木様を呼び止めてしまった。
「右手人差し指の爪…どうされたんですか?」
「えっ…あ…昨日仕事中に指引っ掛けちゃって…その時にね…折角,,スタッフや娘,息子…旦那までもが褒めてくれたネイルなのに…」
乃木様は,右手人差し指を隠す様にして悲しそうな笑みを残して,再び歩き出そうとする。
「…待って下さいっ!「」ん゛ゅっ!?」
あたしは璃桜くんを抱いたまま,乃木様の傍まで近寄り,右手を取って人差し指の爪の状態を確認する。
「マッ…ママ…いきないは,ボクこあいの…」
「あぁ…ごめんね,璃桜大丈夫?」
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