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璃桜くんは,返事をしない変わりと言わんばかりに,あたしの首に『ギューッ』っと抱きついて来た。
「…これぐらいだったら…すぐに修復…リペア可能ですよ」
「えっ?!本当に??」
「はい。」
あたしがそう言って乃木様に微笑むと,カウンターに凭れ掛かってた郁翔さんが,乃木様の指を覗き込んで,“あぁ〜確かに,それぐらいだったら次のネイルの予約まで持たせる修復は可能だろうな。でも,それは,今の状態だったら…の話だがな”っと,言葉を付け足す。
あたしは,『コクン…』っと肯定とも取れる様に頭を縦に振った。
「なら,今すぐ修復をお願いしたいわっ。慎くんいいかしら?」
「それは,別に構わないんだけど…」
慎さんが,誰に修復作業を頼もうか…と悩んでいるのが顔に出ていたのだろう…郁翔さんが慎さんの所まで行き,小声で何かを話していた。
「…やっぱり,郁翔もそう思う?」
「当たり前だろ?」
困った顔をしながら,“そうよねぇ〜”っと呟く慎さんの事はさて置き,乃木様があたしの手を握り締めてきたのだ。
「……っ!?」
「もちろん,心さんが修復してくれるのよね?」
「えっ…ぃゃ…あたしは…っ」
「心さんが,しては下さらないの?」
「……」
あたしは,俯く事しか出来なかった…。
「あのっ…乃木様? 私で良ければ,手が空いてますので,修復の対応させて頂けますが…。」
自分が対応すると名乗り出たのは,強気発言をしていたスタッフに同意していた1人だ。
「悪いけど…」
「アンタには悪いけど…あのネイル…乃木様のネイルのリペアをアンタがするのは無理だ!!」
「……なっ?!」
無理だと言い渡されたスタッフは,納得が出来ないのか,郁翔さんに意見している。
「…なら,出来るモンなら,やって見せろっ!!」
郁翔さんの怒った声がサロン中に響き渡る。
「乃木様,申し訳ありませんが,名乗り出たスタッフで修復…リペア作業をさせて頂けますか?」
郁翔さんが,ネイル担当の責任者として,乃木様に丁寧に対応すると,乃木様は,渋々承諾したのだ。
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