>>8 指輪と慎さんのbirthdayと初めての…

33/52
前へ
/264ページ
次へ
ネイルの修復が始まったのを見届けたあたしは,営業の邪魔になる前に2階へ戻る事を決め,サロンの出入口へと歩き出す。 「ちょっ……何…このデザイン…」 あたしは,扉のドアノブに手を掛けたまま,思わず足を止めてしまった。 「だから,言っただろ!!アンタに修復…リペアは無理だって…。((クソッ…))」 「ちょっと!!気に入ってるネイルだと伝えたはずよね??どうしてくれるんですかっ!!」 ネイルコーナーで,乃木様の怒ってる声が聞こえて来る。 「ママ?」 「あ…ごめんね。お家に戻ろうね。」 璃桜くんとサロンの外へ出ようとすると,“ちあうの”っと言われた。 「違う?」 「…うん…ママにちかできにゃいちごとにゃら,ちてあえて?」 「璃桜…」 あたしは,璃桜くんを抱っこしたまま踵を返し,ネイルコーナーへと急いだ。 「あなた…修復が自分になら出来るから…だから名乗り出たのよね?」 「そっ…そうですけど…」 「じゃぁ,どうしてこんな事になるのよっ!!こんな事になるんだったら,お願いしなきゃ良かった…」 乃木様が,顔を抑えて落ち込む。 「郁翔…どうにか出来ないの?」 「…出来るなら,とっくにオレが交代してるっ」 「そう…よね…」 「ああ…それだけ繊細なデザインなんだよ…削り方をミスしたら終わりだ…あのデザインは,施した本人にしか…正直リペアは無理だ…」 常連のお客様を不愉快にさせてしまった事に,頭を抱える2人。 「どいて…」 「えっ?」 あたしは,乃木様の修復作業をしてるスタッフに声掛ける。 「ーーっ!!ぶっ部外者が口を挟まないで欲しいんだけど!!」 「あなたに,あたしが施したネイルの修復が出来るはずないっ。どいて!!」 「あ…あんたが施したデザインって証拠,どこにもないじゃん!」 意地でもあたしに修復作業をさせようとしないスタッフに,あたしは,苛立った。 「なら,妻にリペアする事が出来たら,妻のネイリストとしての腕を認めなさい!」 「…いいですよ。このネイルを,本当にこの人が施したならリペアが出来た時,オーナーの奥さんと認めてあげますよ。もちろん,ネイリストとしての腕もです。」
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

230人が本棚に入れています
本棚に追加