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ネイルの修復が始まったのを見届けたあたしは,営業の邪魔になる前に2階へ戻る事を決め,サロンの出入口へと歩き出す。
「ちょっ……何…このデザイン…」
あたしは,扉のドアノブに手を掛けたまま,思わず足を止めてしまった。
「だから,言っただろ!!アンタに修復…リペアは無理だって…。((クソッ…))」
「ちょっと!!気に入ってるネイルだと伝えたはずよね??どうしてくれるんですかっ!!」
ネイルコーナーで,乃木様の怒ってる声が聞こえて来る。
「ママ?」
「あ…ごめんね。お家に戻ろうね。」
璃桜くんとサロンの外へ出ようとすると,“ちあうの”っと言われた。
「違う?」
「…うん…ママにちかできにゃいちごとにゃら,ちてあえて?」
「璃桜…」
あたしは,璃桜くんを抱っこしたまま踵を返し,ネイルコーナーへと急いだ。
「あなた…修復が自分になら出来るから…だから名乗り出たのよね?」
「そっ…そうですけど…」
「じゃぁ,どうしてこんな事になるのよっ!!こんな事になるんだったら,お願いしなきゃ良かった…」
乃木様が,顔を抑えて落ち込む。
「郁翔…どうにか出来ないの?」
「…出来るなら,とっくにオレが交代してるっ」
「そう…よね…」
「ああ…それだけ繊細なデザインなんだよ…削り方をミスしたら終わりだ…あのデザインは,施した本人にしか…正直リペアは無理だ…」
常連のお客様を不愉快にさせてしまった事に,頭を抱える2人。
「どいて…」
「えっ?」
あたしは,乃木様の修復作業をしてるスタッフに声掛ける。
「ーーっ!!ぶっ部外者が口を挟まないで欲しいんだけど!!」
「あなたに,あたしが施したネイルの修復が出来るはずないっ。どいて!!」
「あ…あんたが施したデザインって証拠,どこにもないじゃん!」
意地でもあたしに修復作業をさせようとしないスタッフに,あたしは,苛立った。
「なら,妻にリペアする事が出来たら,妻のネイリストとしての腕を認めなさい!」
「…いいですよ。このネイルを,本当にこの人が施したならリペアが出来た時,オーナーの奥さんと認めてあげますよ。もちろん,ネイリストとしての腕もです。」
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