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「よし,ちゃんと硬化してる…じゃぁコレ外しますね」
あたしは,乃木様に一言伝えると,カタログを外して,すぐにバッファーで爪の曲線に沿って余分な物を落し,更にキメの細かいバッファーで削り,ダストを落して全体的なデザインと同じ雰囲気になる様に近付け,縁の部分まで仕上げていきネイルの欠けた部分の境界線部分も分からない様に慎重に且つ,丁寧にして,仕上げのトップコートを爪の断面も忘れずに乗せ,最後の硬化をした。
「……」
「乃木様,両手出して頂いてもいいですか?」
「えっ?両手…って…こうでいいかしら?」
乃木様は,両方のネイルが見える様に手を出してくれた。
あたしは,より良くネイルが見える様に,スタンドライトの角度を変え,左右全体の雰囲気の確認を目を凝らしてし,乃木様へと目線を上げた。
「どうぞ。確認してみて下さい。」
乃木様は,出してくれていた両手を引っ込めて確認する。
「…っ。凄い…どこが欠けてたのか,全然分からない…心さん,ありがとう」
乃木様は,あたしの手を両手で包み込む。
「いえ。最初から,あたしが対応してれば,乃木様に不快な思いをさせずに済んだのに…申し訳ないです…」
あたしは,乃木様に頭を下げる。
「いいのよ。ちゃんと心さんは,してくれたじゃない。信じて良かったわ」
乃木様は,何度も両手のネイルを見比べる。
「乃木様,爪にネイルオイル付けときますね。爪のトリートメント効果もあるので」
「ありがとう。それから…結婚おめでとう」
あたしはいきなりの事に,一瞬驚いたが“ありがとうございます”っと微笑みながら伝え,ネイルオイルを優しく塗り込み,無事に修復作業を終了させたのだ。
「ねぇ…心さん…」
「…? 何でしょう?」
「これからも,ネイルお願い出来ないかしら?」
「それは…」
あたしが口吃っていると,後ろから『パチパチパチ…』と拍手をしながら,郁翔さんがあたし達に近付いて来る。
「乃木様のお気持ちは,分かりました。条件があります。」
「条件?」
乃木様が,首を傾げて聞き返す。
「心がリペア…修復した爪をオレにも見せて頂けませんか?」
「へっ? ええ…別に構わないけど……」
乃木様は,郁翔さんに右手人差し指を見せる。
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