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「…。両手一緒に見せて頂いても?」
「…? はい…」
郁翔さんは,乃木様の両手の爪を真剣な面持ちで見つめた後,
「さすがだな。完璧な仕上がりだ。」
「ええ…本当,心さんにして貰えて良かったです。」
あたしは,乃木様のその一言がとても嬉しかった。
「乃木様? また,何かあれば,いつでも言ってください。乃木様を担当していたスタッフが戻って来るまでの間,あたしで良ければ,慎ちゃ…慎さんに伝えて頂ければ,対応出来ると思うので…」
「いや…乃木様,いつでも対応いたしますので,安心して下さい。」
郁翔さんが,あたしの肩を『ポンッ』っと叩くと,慎さんの傍まで行き耳元で,“さすがだな。完璧なリペアだった…”とだけ伝える。
「…さて,じゃぁ妻が施したリペア…修復度を,自分の目で実際に確認してらっしゃい」
慎さんがスタッフにそう言うと,見事にやり遂げた時点で,完璧な仕上げをした…と確信したのか,見に来る事すらせずたった一言…“悪かったわね…悪態ついて”とだけ言い残し,そのまま仕事に取り掛かったのだった。
「えっと……」
あたしが頬を『ポリポリ』と掻きながら,苦笑いしていると,慎さんと郁翔さんは声を出して笑っていた。
「璃桜,もう少しだけ待っててね。使った物の手入れしちゃうから」
「あ〜い」
いつの間にか,慎さんから抱っこを代わって郁翔さんに抱っこされていた璃桜くん。
「心〜,そのまま置いてていいぞ」
「でも…」
「いいからいいから…。早く,璃桜と遊んでやれ」
郁翔さんが,あたしの傍まで来ると,“お疲れさん。ありがとな,心のお陰で助かったよ”っとお礼を言って,璃桜くんの抱っこを代わり,今度こそ,2階の自宅へ戻ろうとした時,知った声に呼び止められた。
「あ!!ココ,良かったぁ〜。まだ居た」
「弥姫「」みきたん♪」
声を掛けて来た方を向くと,声の主は,親友の弥姫だった。
「どうしたの?」
「うん…今日って,ずっと家に居る?」
「…?今のところ,璃桜と一緒に家で遊んでる予定だけど…」
「じゃぁ,昼休みに入ったら,2階…家の方に行ってもいいかな?あたしの爪もして欲しい…」
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