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一膳のお箸、一つだけの取り皿。今日は土曜の鍋の日だ。
「あっチューハイ忘れた」
鼻歌交じりで立ち上がり、冷蔵庫を開ける。冷気が顔を撫で、心地よい。
「あれ、私のは?」
「え」
声がして、缶チューハイを取った手が止まる。恐る恐るリビングの方をのぞき込む。見知らぬ綺麗な女性が私の部屋のこたつで温もっている。「さむさむ」
すると、いきなり立ち上がってこっちに来た。
「え、え、え、」
「ねえ、箸と皿ってどこ?あ、ここ?ありがと~」
すたすたとリビングへと戻る女性。髪の毛の色が透けている。星空のような深い青色のローブを着ている。
綺麗な女性は机の上に箸と皿を置き、くるりとこっちを向く。
「ありゃ、もしかして立てない?ごめ~ん、はい。手」
手を差し出す女性。私は手を取る。
「ありがとう……」
私達は2人でこたつに潜り込んだ。
「じゃあ鍋食べよー」
「あ、はい…」
押しに弱い私はまんまと流されて、2人で鍋をつつき始める。気まずい空気が流れる。女性は気まずい空気など気に求めてない様子だ。
「あの、そういえば、あの、あなたの…名前は…?」
この空気を打破しようと、私は話しかける。
「あ、わたし?死神~」
「え?」
死神?死神って、あの?そういえばドア開けて入ってきたわけじゃないし、ていうかいつの間にか居たし、そうなのかもしれない。
「そういえばあなたもうちょっとで死ぬよ~」
「え」
私の箸から、ぱさぱさの肉団子がぽそりと落ちた。
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