小説家さんと黄色い髪の男

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********  ここはどこだろう。  周囲を見回すと自分の周りには長方形の机が規則正しく並んでいて、正面の壁には大きな黒板がついている。  教室、か。  休み時間なのか周りからは生徒の談笑する声やふざけ合っているような声が聞こえてくるが自分はその中でひとり自分の席に座っているようだった。 「なんか臭くないかぁ?」  聞こえてきたのは自分をいじめていたグループの中でもリーダー格だった迫田の声。  当時の自分はそんなことを言われたら怯えて身を縮こまらせていただろう。けれどちらりと視線を向けた先にいるのは自分の半分ほどの年の子ども。  こんなのが怖かったなんて、なんてバカバカしいんだろう。  当時の自分にはただじっと耐えることしかできなかった。それくらい分かっている。でも分かった上でそう思う。  大人しくここにいる必要なんて無い。私はもう子どもじゃないんだから。  ふぅと息を吐いて席を立ち、教室を出ていこうとすると子どもが何人か道を塞ぐように立ちはだかる。 「何の用ですか?」 「別に用なんてねぇよ。自意識過剰なんじゃねぇの?」  迫田くんがそう言って、周りの取り巻きたちはコイツしゃべったぞ!くせぇくせぇと声を上げる。  今なら分かる。この人たちが何を思って自分をいじめていたのかが。だからつい、はぁ、と大きいため息が漏れてしまう。 「マジクソだよなぁ。どうせこの場にいる全員が今ここで死んだって世界は何も変わんない」 「はぁ?何言ってんだよ」 「何って、君がぶつかってる壁だと思っているものだよ。他人を蹴落としたって自分の価値は上がらないのにさ、ホント迷惑」  目が覚めると明るかったはずの部屋の中は真っ暗で、その暗闇の中でノートパソコンの画面だけが白く光っていた。
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