4. 残されたふたり

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「あの、ありがとう。」 「えっ?」 まさか礼を言われると思っていなかったようで彼女は丸々とした目をパチクリさせた。 「それで….悪かった。キツイことを言って。」 「もういいよ。」 彼女は困ったように眉根を下げて少し微笑んでみせた。 「その…飯は食う。ちゃんと。だけど学校はまだ…」 「いいよ、わかった。別に黒崎の首に縄くくりつけて引きずって行こうなんて思ってないよ。」 最初はそうしようと思ってたけどね。と呟き目線を合わせるとどちらかともなくぷっと吹き出し笑ってしまった。 さてさて、と呟くと彼女は当たり前のように食器を抱え台所へ片付けをしに向かって行った。 その後ろ姿を見ていると、ふと思い出したくない別の人間を思い出してしまい頭を強く振ってそれを消そうとした。ドクドクと心臓が波打ち頭が痛くなる。 食器を洗う彼女を見つめながら、そこから聴こえてくる小さな鼻歌に耳を傾け、少しずつ落ち着いてくる心臓に手を当てた。 こんな情けない自分を彼女には見られたくない。絶対に知られたくない。何故かそんなことを思い、再び体をベットに深く深く埋めた。
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