4. 残されたふたり

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4. 残されたふたり

(なんでこんなことになってるんだろ…) あたりは薄暗くなりはじめ、オレンジ色の光が部屋を包んでいる。 目の前には散乱したゴミたち、そして盛り上がった布団を乗せているベットがあるだけだった。 さつきは眉間に深く皺を作ると盛大にため息をついた。 遡ることたった10分前、突然あっと声を上げた胡桃沢はそろそろ塾の時間だといけしゃあしゃあと言い放った。 今、この状態で、ほとんど初対面の2人を置いていくのか?しかも男女。まさかそんなこと…と思ったが目の前にいるのはあの胡桃沢雪、容易にやりかねなかった。 予想通り胡桃沢は足元のバックを拾い上げ、プリンスらしい微笑みを投げかけた。 「ほんっとごめんね。塾なんだ。あとはさつきに任せるね。」 「嘘でし」 「待て雪。」 嘘でしょ、と言う前にほとんど口を開かなかった籠城中の黒崎が布団から出てきて胡桃沢の肩を握った。
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