5. 蝕む者

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5. 蝕む者

真っ暗な空間に思い出したくない女の声が響く。それは耳を塞いでも関係ないようで、自分を責める彼女の声が津波のように押し寄せる。 体がずぶずぶと底なし沼のような地面に沈んでいく。足を動かそうとしても腕を動かそうとしてもびくりとも動かず、拷問のような彼女の声と体に絡みつく真っ黒な沼を、ただただ受け入れるしかなかった。 そうか、きっと昔も今も、抵抗したってなんの意味もなさないんだな。 そして静かに目を閉じて体を預けた。
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