8/26
前へ
/141ページ
次へ
 ボールが転がると、シャラシャラと小さな鈴の音が響く。 「ほら、あさぎくん。もう一回」  居間から廊下に向かって、あさぎくんの大好きなボールを投げる。途中で触って自ら更に勢いをつけ、ボールは玄関まで転がって見えなくなる。でも心配はいらない。あさぎくんはボールを転がしながら、ちゃんと戻ってくるのだ。 「あさぎくん、賢いっ!」  頭を撫でると、ころんと転がってしまった。どうやら3往復が限界のようだ。お気に入りのボールはしっかり抱っこしたまま、右になったり左になったりごろごろし始めてしまった。  こ、これは・・・写真で見たポーズ。ここぞとばかりにスマホで連写する。あんまりにもかわいいのと、椎名が見たいとご所望なのだ。勿論佐倉さんの許可はもらった。  あさぎくんがボールで遊んでいる間、もえぎさんは手を出さなかった。一緒に走って追いかけるだけ。今も写真を撮り終わるのを、じっと待っている。瞳をキラキラと輝かせて。 「お待たせしました」  白い猫じゃらしを手にした瞬間、もえぎさんの中のスイッチが切り替わったようだ。左右に大きく動かすと、一心不乱に追いかける追いかける。持ち上げると大ジャンプ。おおっ!と思わず感嘆の声が漏れた。すごい運動神経だ。これもぜひ写真におさめなければと、ベストショットを撮るために何度もチャレンジした。もえぎさんは飽きることなく、何度も何度も大ジャンプを披露してくれる。  食事の量は同じなのに、6キロとちょっとぽっちゃりなあさぎくん。スリムなもえぎさんは3、5キロ。体格も性別も違うし、一概には言えないけれど、体型の違いが分かるような気がする。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加