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 かれこれ一時間にはなるのに、もえぎさんの遊びへの欲求は尽きない。肩で息をし、いつもは淡いピンクの肉球の色に赤みが差しても、猫じゃらしを動かせば必ず反応する。  猫を人間の年齢に換算すれば、8歳のもえぎさんは40代になるらしい。最近そんなことばかり調べては驚いたり感心したりしている。さすがに過剰な運動は心配になってくる。  ここは心を鬼にして、一旦休憩を取ることにした。 「もえぎさん、また後で遊びましょう」  声をかけ猫じゃらしをしまう素振りを見せると、もえぎさんはその場にころんと横になった。楽しかったー、という声が聞こえてきそうな満足げな表情で、乱れた毛並みを整えるように毛づくろいを始める。  ちなみにあさぎくんは、時々参加しにきていたけれどやっぱり長続きせず、今は窓際のお気に入りのクッションで眠っている。  『猫はコタツで丸くなる』と言うけれど、部屋があたたかいと丸くならずに伸びることもあるようだ。おなかを天井に向け全開にした、あられもない姿で寝息を立てている。  そっと近付いて寝姿も撮影したが、警戒心のかけらもなく、勿論起きる気配もない。猫の寝顔は、口角が上がってまるで笑っているように見える。私まで笑顔になってしまう。  こんなにかわいい5歳のあさぎくんでも人間年齢なら30代、私よりも佐倉さんよりも年上ということになる。
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