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 そのままソファに沈んでぼうっとしていると、突然誰かに肩を叩かれた。 「え?」  びっくりして体を起こす。すると、もう一回。トントンと肩を叩かれた。  肩の向こうにいたのはもえぎさん。  も、もしかして・・・、これがもえぎさんのおねだりの肩たたき!!  窓に目を向けると、もう随分日が傾いている。冬は暗くなるのが早い。  いつもは帰宅時だけれど、お休みの日は早い時間におやつをあげていると佐倉さんも言っていた。おねだりと言うより、そろそろおやつの時間ではないかしら?と、もえぎさんに注意されたような気がする。 「ごめんなさい。ちょっとぼんやりしてました」  慌ててソファから立ち上がる。 「すぐにおやつを用意しますね」  もえぎさんが、分かればよろしいと言うような眼差しで台所に向かう私を見送る。  家に一人でいると殆ど声を出さない。休みの日に引きこもっていれば、丸一日会話をしないことだってある。  猫と、いや猫に限らず動物と暮らすと、やっぱり会話が発生するんだなあと改めて思った。佐倉さんなら、毎日もっといろんなことを話していそうだ。その会話の中に、私の話題があがることもあったりしたのかな、・・・考えて少しだけくすぐったい気持ちになった。  おやつを用意していると、あさぎくんも起きてきて、甘えるようにすり寄ってきた。  先週持参したおやつを、並んで仲良く食べる姿を見ながら、私も夕飯にしようとコンロに火を点けた。いつもより少し早いけれど、パン屋の朝は早いので、基本的に早寝早起きの生活だ。  明日は佐倉さんから頼まれたもう一つのお仕事もある。早目にお風呂にも入って、もうすぐ最終回を迎えるドラマを見たらすぐに布団に潜ろう。これからの予定を考えつつ、もえぎさんとあさぎくんが「ごちそうさま」と言うようにお皿を空にして満足そうな顔で立ち去るまでをしゃがんで見守り、また足がしびれることになってしまった。
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