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「さて、と」
佐倉さんの寝室にあるウオークインクローゼットの入口で、私は気合を入れるように腕まくりをした。
4畳程のクローゼットの中には、扇風機やトランクなども置かれているが、一見とても綺麗に洋服が並んでいるように見える。お仕事用のコートにスーツ、普段使いのダウンジャケット。更にはジーンズにセーター、カーディガン。Tシャツは長袖から半袖に至るまで、佐倉さんのワードローブのすべてがハンガーにかかっている。
お留守番中にもう一つお願いしたいことがあると連れて来られた時、それらをぐるりと見回してから、私はまさかと衣装ケースに手をかけた。引き出しの中は見事に空っぽ、予想通りの状態だった。
料理上手で、掃除も洗濯も、家事全般が得意でマメな佐倉さん。今回のお泊りも猫ちゃん達のベッドにお邪魔したいとお願いしたら、シーツを交換してくれていた。
そんな佐倉さんの唯一の苦手が「洗濯物をたたむこと」だった。
下着や靴下などは、さすがになんとかたたんでしまっていたけれど、洋服に関しては放棄。とにかくすべてハンガーにかかっているようだった。道理でハンガーの数が多い訳だ。
ニット類はハンガーの跡が付くのでは・・・と振り向くと、佐倉さんは悪戯が見つかった子供みたいに、恥ずかしそうに首に手を当てていた。着ていた紺とグレーの綺麗な模様のカーディガンの肩には、よくよく見ればぴょこんと小さな跡が飛び出している。
という訳で、これからクローゼットの整理をするのだ。せっかくある衣装ケースを殆ど使っていないのも勿体ない。できるだけ佐倉さんが使いやすいよう、季節も分けて整理整頓したい。
もえぎさんとあさぎくんも、これから何が始まるのだろうと、興味津々といった様子で中を覗き込んでいる。
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