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 遠くであさぎくんが鳴いている声が聞こえる。  この声には聞き覚えがある。「お帰りー」のにゃーだ。佐倉さんに「お留守番してたよー」「かまってー」「抱っこー」と猛アピールしている。  ああ、佐倉さんが帰って来て良かったね。私も少しは役に立ったのかな。意識が浮上しはじめるのと同時に、名前を呼ばれた。 「・・・さくら、ちゃん?」  佐倉さんのやさしい声。その響きが懐かしく、なんだか私まで嬉しくなって、シーツに頬を摺り寄せ、猫のように丸くなる。 「こんなところで寝てると・・・風邪をひくよ」  長い指がそっと触れる。顔にかかっていた邪魔な髪を、やさしくかきあげてくれる。 「佐倉さん・・・?お帰りなさい」  夢見心地に呟くと、佐倉さんが嬉しそうに微笑んだ。 「はい。ただいま帰りました」  佐倉さんの笑顔と、抱っこされご満悦なあさぎくんが見える。もえぎさんは・・・と考えたところで、覚醒した。バッと飛び起きても手遅れで、私は佐倉さんのベッドの上でしっかりうたた寝していた。ばかりか、それを発見されてしまうという、とてつもなく恥かしい状態に陥っていた。 「あ、えっと、これは・・・その」  どんどん火照る顔でしどろもどろになっていると、 「うん。もえぎさんに付き合ってくれてたんだね。状況は分かるから、落ち着いて」
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