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 佐倉さんのやさしいフォローで、ようやくもえぎさんが目に入った。もえぎさんは眠る私を守るように、佐倉さんのお迎えにも行かず、隣に座ってくれていた。  「香箱座り」という前足がすっぽり体の下に隠れて見えない猫独特の座り方。にわか猫好きになって知った、実はお気に入りのポーズだ。 「もえぎさんも、お留守番ご苦労様でした」  佐倉さんに撫でてもらうと、もえぎさんも本当に嬉しそうだ。佐倉さんはほんとはちゃんと気付いていて、お留守番中にベッドにいる証拠写真なんて必要なかったのかもしれない。  そこでようやく遅まきながら佐倉さんのベッドを下りた。普段から昼寝はよくするけれど、我ながらあきれるくらい、よくもまあ人様のベッドの上で気持ち良よく熟睡してしまったものだ。  佐倉さんはあさぎくんを抱っこしたままクローゼットの中を覗いて、歓声をあげている。 「うわあ、久しぶりの光景だ。ありがとう、さくらちゃん。綺麗に片付けてくれて」 「いえ」 「・・・できるだけこれをキープできるよう、頑張るよ。うん」  佐倉さんの決意表明は、既に「できるだけ」がついているあたりからして、かなりあやしそうだ。自信のなさが伝わって、背中を見つめながらこっそり苦笑した。
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